フランキンセンス(Boswellia sacra)に会いに、オマーンへ

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 フランキンセンス(乳香)は世界各地で使われてきた香の中でも、最も古い香のひとつです。主な産地はアフリカ東北部、アラビア半島南端のオマーン、イエメン。なかでもオマーンのイエメン国境近くのドファール地方で採れるフランキンセンスは品質の良さで知られています。フランキンセンスがどんなところで育ち、どんな花が咲くのか、自分の目で見てみたくて、2015年10月と2017年の5月、オマーンのドファール地方を訪れました。

 ドファール地方の中心はサラーラという町です。ドファールで採れたさまざまなグレードのフランキンセンスはサラーラの乳香スーク(市場)で売られています。

 フランキンセンスのグレードは採れる場所で決まります。雨がほとんど降ることのないドファール地方の東側の山の上の土漠、ワディ(涸れ川。雨が降るときには、そこが川になる)で採れたものは、ホジャリ、グリーンホジャリと呼ばれ、透き通るようなレモンイエローからグリーンがかった色をしており、最高の品質と評価されています。

 同じドファール地方でも、他の地域で採れたものはホジャリに比べ、低いとされます。従って、もっとも品質の高いものは、山間の荒れた地形に深く根を張って育ちます。

 ドファール地方で見てきた、フランキンセンスを写真でご紹介します。

<写真1・巻頭>  アラビア海の砂浜。 サラーラで泊まったホテルの前の浜です。5月の気温は30度以上で高湿度。海も浜も空もきれいでずっと眺めていても、見飽きません。 2017年5月

 

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<写真2> サラーラの乳香スーク(ハッファ・スーク)  サラーラの中心の西側、海のすぐ近くにある乳香市場。ここではフランキンセンスを中心に、香や香水、土産物なども売っています。店先でフランキンセンスを焚いているところも多く、香り高いスークです。 2017年5月

 

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<写真3> ワディ・ダウカーのフランキンセンスの木  ワディは涸れ川のこと。滅多に雨が降らず、岩と土漠(砂ではなく乾いた土)の”荒れ地”になっています。フランキンセンスの多くがこうした地形の土壌、気候が世界でも定評のある香り高い樹脂を生み出します。 2015年10月

 

 

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<写真4> フランキンセンス・パーク ワディ(涸れ川)というと、谷間のように狭いところを想像しがちですが、ワディ・ダウカーは広大です。ここではフランキンセンスを植林中。ユネスコ世界遺産にも登録されています。 2015年10月

 

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<写真5> 山のフランキンセンス ホジャリが採れるのはドファール地方の東側の山地。ここもその地域です。ここから数時間車でいくと、狭いワディの谷底に最上質の樹脂を産み出すフランキンセンスの木をたくさん見ることができます。 2017年5月

 

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<写真6> 自然ににじみ出た樹脂  フランキンセンスの幹には白樺のような薄い樹皮がついています。 樹皮が剥けているところから樹脂が自然ににじみ出ています。まだ固まっておらず、手にべとつく感じ。とてもよい香りがしました。  実際樹脂を採取するときには専用のナイフが使われます。切り込みを入れるのではなく、表面を薄くはぐように入れる。すると、涙のような樹脂が切り取られた表面からにじみだす。 2015年10月

 

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<写真7> 海の近くのフランキンセンス サラーラの海の近くにある乳香博物館のフランキンセンスの木。 湿度が高い海辺に近いフランキンセンスは葉が青々と茂っています。 2015年10月

 

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<写真8> フランキンセンスの葉 これは海辺に植えられたフランキンセンスの葉。生き生きとした緑の葉を広げています。 2017年5月

 

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<写真9> フランキンセンスの花 乾燥した山岳地帯の土漠では、フランキンセンスの木は一見枯れ木のようで、葉もつけていませんでしたが、新芽と手指の先ほどの華麗な花をつけていました。 2017年5月

 

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<写真10> フランキンセンスの種 新芽のそばには種もついています。 2017年5月

 

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<写真11>  枯れて倒れたフランキンセンスの木は、火付きがよいそうです。一泊した土漠のキャンプでは、薪としてお湯を沸かしたり、料理に使いました。もちろん、夜は寒くなるので、暖をとるのにも・・。なんだか、とても贅沢な気分でした。 2017年5月

(村田京子)

 

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